ユニナイト処理(ガス軟窒化処理、炭窒化処理)
浸炭焼き入れ
浸炭窒化焼き入れ
無酸化(光輝焼き入れ)
焼き戻し(テンパー)、プレステンパー、光輝テンパー
サブゼロ処理


ユニナイト処理(ガス軟窒化処理、炭窒化処理)


機械加工等が終了して完成品形状となった部品に対して
強度、耐摩耗性、耐疲労性、耐食性を付加する
表面改質処理です。

【特徴】
・表面硬さが高く(500HV炭素鋼)、
 緻密な化合物層(15~20μm)が得られます。
・耐摩耗性が優れています。
・かじり、擦傷に強くなります。
・疲労強度が向上します。
・低温処理のため、ひずみを極めて少なくできます。
・無公害です。
・あらゆる鋼種に適用できます。
・硬質クロムメッキ並の耐食性があります。
・アルミダイカスト金型等に処理を施すと
 寿命が飛躍的に向上します。
・複雑な形状のものでも均一に処理できます。

【使用例】
・SPCC ワッシャー、クラッチ、カメラ部品
・S15C~S55C 歯車、シャフト
・SCM435 減速機
・SKD11・SKD61 ダイカスト金型・転造ローラー
・SKH9 カム、ドリル、リーマー
・FCD45 油圧部品
・SUP6 バネ
etc

【よくある質問】
Q、どのぐらい変形しますか?
A、原則的に変形はありません。
   処理温度が低いため構造上の変形はありませんが、
   表面に形成される化合物層が膨張するため、
   寸法が3~5μm程増加します。
   (化合物層は15~20μmの厚さがありますが、
    寸法への影響はその30%程です)
  
Q、タフトライドとは違うのですか?
A、タフトライドはドイツデュルフェリット社の登録商標です。
   軟窒化処理をタフトライドと総称されることがありますが
   厳密にはドイツデュルフェリット社の商品名です。
   本来は各炉メーカーごとに別の商品名が存在しており、
   弊社では「ユニナイト処理」または「ガス軟窒化処理」
   という名称で取扱っております。
   詳しくは担当者までお問い合わせください。
  
【備考】
弊社の軟窒化処理は、株式会社 小松製作所 様から
熱処理認定証を頂いております。

納期:通常は営業日なか2日頂いておりますが、
   ガス軟窒化処理は毎日実施しておりますので
   お客様のご希望により翌日渡しも可能です。
▼化合物層


一般的な軟窒化処理の特徴としては
白層と呼ばれる鉄-窒素-炭素化合物層の生成により、
高い耐摩耗性、耐疲労性が得られることです。
純窒化では十分な硬さを得ることができない
低炭素鋼や低合金鋼でも、
炭素が入ることで十分な硬さを得ることができます。
また低温処理のため変形がきわめて少ないことも
軟窒化処理の特徴のひとつです。

当社のガス軟窒化(炭窒化)ユニナイトは
シアン公害の心配もなく
加工品の表面硬さ、耐摩耗性、耐疲労性が高い。
またポーラス層がほとんどないため
抜群の耐食性が得られます。
またアンモニアを主成分とした「気体を媒体とした窒化」は
細い部分にも浸入することができるため、
精密部品など複雑形状のものにも最適です。
当社では冷却材にコールド油を使用しているので、
他社のガス軟窒化処理品よりも高い耐疲労性を得ることが
期待できます。


▼GSN処理品








浸炭焼き入れ


主にSCM415材等の肌焼き鋼部品に対し、
高温中で表面に炭素を浸入させてから焼き入れを行う処理です。
低炭素の母材の表面に炭素を浸入させて焼き入れすることで
強度とじん性(耐衝撃性)の両方を併せ持った製品に
生まれ変わります。

【特徴】
・強度とじん性(耐衝撃性)を与えます。

【使用例】
・ポンプギヤ
・エンジンギヤ
・エアツール
・ピストンピン
etc

【よくある質問】
Q、部分的な浸炭焼き入れ防止は可能ですか?
A、可能です。
   外周部では浸炭防止剤を塗布することで浸炭を防止します。
   また、ねじ部であればボルトナットを取付ける事も有効です。
   その他の方法については担当者にご相談ください。
  
   ▲浸炭防止剤を塗布した例
  
【備考】
納期:原則1週間頂いておりますが、
   お客様のご希望により納期を短縮できる場合もございます。
   また0.8mm深さの浸炭、0.4mm深さの浸炭などは
   毎日実施しておりますので
   翌日午後渡しが可能な場合もございます。

▼浸炭組織


滴注式ガス浸炭方式は複雑形状の部品でも
細部まで雰囲気がいきわたり均一な浸炭が可能です。

熱処理の品質というものは、
準備段階で半分以上きまってしまいます。
弊社では「より良いものをつくる」ことを念頭に置き、
ロット内または個体内が均一に熱処理されるよう
準備方法にもさまざまな工夫をとりいれております。
冷却剤にはセミホットタイプの油を使用しているため
変形を最小限におさえることができます。
熱処理内容は弊社のノウハウを凝縮した
独自開発のコンピュータプログラムにより
完璧に管理制御されており
狙い通りの浸炭深さ、表面硬さが得られ、
品質は常に安定してしております。
▼高品質を生み出すセット例







浸炭窒化焼き入れ


一般的に焼き入れ性が悪いとされている
低炭素鋼、SS材,SPC材等の表面に
炭素と窒素を同時に浸透させてから焼き入れする処理方法です。

【特徴】
・耐摩耗性、耐疲労性が向上。
・処理温度が低いため変形が少ない。
・窒化の影響で焼き戻し抵抗も大きくなる。

【使用例】
・農機部品
・自動車部品
・建機部品
・カラー
・ワッシャー類
・軸受け類
・プレス加工プレート類
etc

【よくある質問】
Q、浸炭鋼や合金鋼、高炭素鋼にも適用できますか?
A、適応できます。
   浸炭焼き入れだけでも硬度がでる材質でも、
   浸炭窒化すると耐疲労性が飛躍的に向上するため、
   あえて浸炭窒化処理を選択される場合もあります。
  
【備考】
納期:原則1週間頂いておりますが、
   お客様のご希望により納期を短縮できる場合もございます。
▼プレス加工品には浸炭窒化処理が最適


炭素と同時に窒素を浸入させることで
浸炭だけでは硬化しない材料にも
硬さを入れることができます。
安価な低炭素鋼や快削鋼でも適用できます。

雰囲気ガスにアンモニアガスを添加することで
カーボンポテンシャルの管理が難しくなりますが
弊社では永年の経験技術を凝縮した
プログラムコントロールで
安定した高品質の製品をお届けすることができます。
また焼結材のように
多孔質で表面積の計り知れないようなワークに対して
アンモニアガスもプロパンガスも使用しない
弊社独自の技術で処理をおこない
高い品質を維持しています。







無酸化(光輝焼き入れ)


浸炭をしなくても焼きのはいる(熱処理で硬くなる)材料に対して
酸化も脱炭も起こらないように
炉内雰囲気を調整して熱処理をおこないます。

【特徴】
・無酸化雰囲気での熱処理。
・酸化及び脱炭が起こらない。
・表面にスケール(酸化皮膜)が付かず光輝状態を保持する。

【使用例】
・産業機械や工作機械などの機械構造用部品
 (SCM435、SCM440、SNCM439など)
・切削用工具などに用いられる合金工具鋼
 (SKSなど)
・鋳物部品
 (FCDなど)
etc



当社ではすべての熱処理パターンにおいて
熱処理雰囲気をコンピューター制御させているため
材料欠陥の原因となる脱炭を防ぐことができます。







焼き戻し(テンパー)、プレステンパー、光輝テンパー


焼き入れ処理を施したものには
必ず焼き戻し(テンパー)処理をおこないます。
完成品に平坦度が必要な場合は
プレステンパーをおこないます(切削工具の刃など)。
高温焼き戻しによる酸化被膜付着を嫌うときは
光輝テンパーをおこないます(パーカー処理の前工程等)。

【特徴】
・残留応力が解除されて耐衝撃性が回復。
・焼き戻し温度を調整して必要な機械的性質を得ることが可能。
・プレステンパーをすれば焼き入れ変形した板材も平坦になります。
・光輝テンパーを利用すれば
 酸化被膜除去を目的としたショットブラストを省略可能。
 (ねじ山をつぶしたり鋭角をまるめることもありません)

【よくある質問】
Q、熱処理完成品に青色や金色の物があるのはなぜですか?
A、これはテンパーカラーと呼ばれるものです。
   焼き戻しの温度や時間によって酸化皮膜の厚みが
   変化するために反射光の色調が変化します。
   密閉式の焼き戻し炉では炉内の酸素濃度によっても
   テンパーカラーは変わります。
  
▼プレステンパー



通常の焼き戻しは150~600℃の
必要温度まであげて一定時間保持してから
空冷するという単純な作業ですが、
プレステンパーとか光輝テンパーというような
特殊なものもあります。







サブゼロ処理


工具鋼や浸炭した鋼のような高炭素鋼を焼き入れすると
オーステナイトという組織が残ります。
この残留オーステナイトは、
硬さの低下や経年変化の原因となるため
嫌われる場合があります。
処理品を0℃以下の温度まで冷やし、
残留オーステナイトをマルテンサイトに変化させることを
サブゼロ処理といいます。

【特徴】
・硬さと耐摩耗性が上昇します。
・残留オーステナイトによる経年変化を防止します。
・切削加工で寸法がわずかにマイナスになってしまったとき、
 残留オーステナイトを多く含む鋼であれば
 サブゼロ処理で膨張させて救済できる場合もあります。

【使用例】
経年変化をとくに嫌うゲージ鋼や
最高硬さ(HRC64以上)を必要とするとき
サブゼロ処理が利用されます。

【よくある質問】
Q、残留オーステナイトは有害なのですか?
A、いいえ、そうとも限りません。
   使用条件によっては耐疲労性、耐ピッチング性を
   向上させます。
   浸炭用材料に浸炭浸窒処理をおこない、
   わざと表面に残留オーステナイトを発生させる事もあります。
  
▼冷却には液体窒素を利用


通常のサブゼロ処理はアルコール+ドライアイスで
-80℃で行われます。

当社では-196℃の液体窒素に処理品を浸漬するため、
より多くの残留オーステナイトが
マルテンサイトに変態
します。